こっちのお客さん
ドイツに来てから思うのは、
ここの飲食業はサービス業とは呼べない。
とにかく
こちらのお客さんは「お客さん」で、お客さんとした権利はあるのだろうけど
日本人の持っている「お客様」という感覚とは全然違う。
私も飲食業に勤めているが、もっぱら製造なので店内から聞こえてくる話を盗み聞きしている。
今日来た30代の男性。
話し声も良く通る声だったけど、何より笑い方が爆発的で、聞いてるだけでこちらが笑っちゃう感じだったので、つい店内を覗いてしまった。
売り子があっさりと返答しているにもかかわらず、一人で喋りまくって大笑いしてるから次第に笑い声がカラカラになってきて、咳払いはじめるし、水売ってる?なんて質問するから、思わずあたしも声を出して笑ってしまった。
話は反れたけど、サービス業の話題に戻ると、
そのお客さんが水がほしいって言った後に、売り子があたしのところに来て、
「あの人本当にうるさい。あなたも聞こえてるでしょう。みた?もう30分も経つわ!いい加減帰ってほしい」
って。ドアも開いてるし、製造場所とお店も薄い壁一枚だから、そんな大きい声で言ったら絶対聞こえる!あたしはアワアワしながら、店内になるべくこの話が聞こえないように使っていたミキサーのスピードを上げた。
けど、絶対聞こえてた、もうお客さんの目の前で言っちゃったも同然。
うちのお店ではこんなことが良くある。とはいっても、数人の口の悪い人がね、どのお店にもいますよね。
カフェに行っても店員さん同士で話し込んでて全くお客さんに気づかないし、
気づいても、いまメッセージ送らないとだから待ってて、って感じでケータイいじりながら放置される。 レストランでも料理出てくるまでに30分とか待つのは当たり前。混んでる時間は1時間以上。けど、こっちのお客さんて待たされるの平気なんだよね。
「あ、何か他の事やってるから、今は待つ時間。」「混んでるから、今のキッチンはすごく忙しいんだろうな。」
みたいな落ち着いた考えがあるみたい。
あたしが店内のショーケースを整えてた時にお客さんがきて、冷蔵品をテーブルに出したまま、ご注文は。って聞いたら、「待てるわよ。それが終わってからでいいわ。」って。なんて優しいの。お客さんという自覚がありながらその謙虚さを合わせ持ってる事実に感動したわ。
お客さんとサービスする側のバランスが取れているのかも。
最初は、ここの飲食業はサービス業とは呼べない。って思ったけど、意外と、これをサービス業の「基準」といってもいいのかも。日本人が想定しているサービスは受けられないと思ったほうがいいかもしれない。
お互いお客さん視線と店員さん視線でものを見れるなら、ここのいいところが見えてくる。
日本にいたときはお客様に最高のエクスペリエンスを!!って、志高くサービスに尽くしていたのに。学習と慣れによってこちらのサービス業文化にも理解が深まってきた。
このサービス業の空間もいい。
ちか